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こんにちは、スタッフHです。

バンド・デシネ』という言葉、聞いたことがありますか?
「ルーヴルNo.9」が全国巡業していたので、そこで初めて聞いた、あるいは実際にご覧になった方も多いかもしれません。

バンド・デシネ(BD:ベデ)とは、フランス・ベルギーなどのフランス語圏の漫画のことです。
一般的に、BDはA4版以上でフルカラー。日本人がイメージする漫画(コミック)とは、少し様相が違いますね。BDは、フランスでは「第9の芸術」と言われているようで、非常に芸術性が高く、絵画のように緻密な描写や、高度な技巧が用いられているものも多く見られます。

漫画好きだけではなく、アート好きも心を掴まれてしまうという、深く美しいBDの世界。
その、ほんの触りを覗いてみましょう。有名なので日本でも手に入れやすい、おすすめの3冊です。

伝説的バンド・デシネ、壮大なスペース・オペラの傑作

『L’INCAL アンカル』
メビウス  原作:アレハンドロ・ホドロフスキー

BDといえばまずこれ、とよく紹介されています。
解説含め360ページの骨太な本で、厚みは約3センチ! A4に近いサイズなので、置いているだけで存在感がすごい。図鑑のようです。
『アンカル』は、BD界の神様・故メビウス(ジャン・ジロー)が手がけたSF長編作品。原作は、映画監督ホドロフスキーです。1980年にフランスで連載が始まり、この二人のタッグで世界的ベストセラーになりました。

主人公ジョン・ディフールはしがない探偵。ひょんなことから謎の物質(後に意志のある生命体だとわかります)「アンカル」を手に入れ、それをめぐる宇宙の抗争に巻き込まれていく、という物語。
犬の頭の戦士やミュータントが出てきたり、警察がC-3POみたいなロボットだったり、クローン技術が日常的だったりと、SF要素てんこ盛りです。

「夢見ることは 生きること」という印象的なコピーが帯にありますが、これは『アンカル』がホドロフスキーの明晰夢から着想を得た物語からかもしれません。主人公ジョンが辿る物語の結末にも、「夢」というワードが登場します。

有名なのは、冒頭のこの落下シーン。

ほかにも素晴らしいカットがたくさんあり、作中の色々なシーンが有名映画や作品にオマージュとして使用されるほど、世界中のクリエイターに影響を与えた作品です。

ちなみに、メビウスの代表作『アルザック』の主人公は翼竜に乗って飛翔しますが、この描写は『風の谷のナウシカ』に登場する皆のあこがれの乗り物、メーヴェに影響を与えたそう。メビウスと宮崎駿監督には交友があり、お互いに尊敬しあっていたそうです。(余談ですが、メビウスは長女に「ナウシカ」と名付けたとか)

硬質で廃退的な近未来

『MONSTER』
エンキ・ビラル

メビウスに次ぐBD界の巨匠で、日本でも人気の高いエンキ・ビラル。

ビラルは1951年にセルビア(当時はユーゴスラビア)で生まれ、9歳のときにパリに移住しました。『MONSTER』は、その生い立ちが深く影響している作品です。
ビラルはインタビューで、「『MONSTER』は旧ユーゴスラビアの崩壊に焦点を当てたもの」と語っています。子供時代を過ごしたベルグラードでの記憶が鮮烈にビラル心に焼き付いていて、それが物語の世界を作っているそう。

『MONSTER』の舞台は近未来。主人公ナイキは紛争下のサラエヴォで生まれ、なんと生後18日のことを覚えているという、驚異的な記憶力の持ち主です。赤ん坊の頃一緒に居て、今は離れ離れになってしまった二人の幼馴染を探すうち、大きな闘争に巻き込まれていきます。

宗教間の争いや国際的なテロ、科学と文明と思想が絡み合う硬質な世界が、独特の色彩で表現されています。「廃退」や「陰鬱」を感じさせる彩度の低いアーティステックな世界観は、日本の作家にもファンが多いようですね。

キュートで少しお間抜けな、フレンチガールの日常

『ジョゼフィーヌ!(アラサーフレンチガールのさえない毎日)』
ペネロープ・バジュー

こちらは前述2つと比べるとライトなBD。
作者ペネロープのブログから大ヒットし、単行本化されました。タイトル通り、アラサー独身女子の日常を描いています。

パリで暮らす、独身OLジョゼフィーヌ。ペタンコの胸と、脂肪吸引に訪れた整形外科医にもさじを投げられる、大きなお尻がコンプレックス。ワインとおしゃれが大好きで、お調子者でお間抜けだけど、とってもキュート。

そんなジョゼフィーヌの日常はまさに“女子”あるある満載です。身勝手なところもありつつ憎めない、国籍を越えて親近感を感じるチャーミングなキャラクターは、フランス版『サザエさん』な印象。(ジョゼフィーヌが最終的にマスオさんに出会えるかどうかは、ぜひ確かめて頂きたいです)

物語だけでなく、ジョゼフィーヌ含め登場するキャクターのファッションもさすがはパリ、都会的でオシャレです。色彩もハイセンスで、フランスの配色見本を見てるようで、ワクワクします。


BDは値段が高いので、敷居が高い……と思ってしまいますよね。実際、本国フランスからみても、日本のBDは高額のようです。(フランスでは高くても1000円いかないのだとか)
バンド・デシネ大使のベデくんのつぶやき解説本なども出ているので、初心者はそこから入るのも良いかと思います。

大判は置き場所に困る……という方も、電子書籍でいくつか取り扱っているようなので、探してみてくださいね。

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