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ヴィヴィアン・マイヤー
今日は、ロベール・ドアノーとロバート・フランクといった偉大な写真家のドキュメンタリー映画の記事に引き続き、写真家を扱ったドキュメンタリーで近年のものを3つ紹介したいと思います。

『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』

ヴィヴィアン・マイヤーって、プロの写真家ではないんです。
家政婦をしながら街を歩いて写真をたくさん撮りだめていたのですが、その作品を人に見せることを一切しなかった。かなり風変わりな女性だったようです。

彼女が有名になったのは亡くなってから。

たまたまオークションで彼女の作品のネガを手に入れた人物が、その作品の凄さに気づいてネット上で公開したのがきっかけ。最初は美術館へ持ちかけても相手にされなかったらしいのですが、ネット上で話題になり、ついには展覧会を開くまでに人気が出てしまいます。

『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』は、その顛末と彼女を知る人へのインタビューを通して、その人物像にせまっていくドキュメンタリーです。
題材からしてもう面白くないわけがない。写真に興味がなくても、映画として楽しめます!

なにより、シカゴの路上で出会う人を写した彼女の作品に目が奪われます。ローライの二眼レフを使用していたのですが、覗き込むカメラ独特のお辞儀スタイルから生まれるアングルなど、いい意味で“いかにも”ローライな写真が印象的。ローライ好きはまだまだ多いと思いますが、この映画は必見ですよ。

しかし、写真集なんかで彼女の作品を見て思うのは、シャッターを押したのはヴィヴィアン本人だが、写真をセレクト(重要!)したり、配列を考えたり、演出しているのは他人であるということ。
本人からしたら、ちょっとお遊びで撮っただけのカットや練習だったかもしれないカットが、“彼女の作品”として発表されている。
これが本当に彼女が表現したかったことなのか?自撮りをしたカットを発表するような人物だったのか?今となっては知りようがないですが、そういう見方も含めて引き込まれてしまいます。

『アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影』

こちらは、ロック好きにはお馴染みのアルバム・ジャケットの写真を数多く手がけた写真家・アントン・コービンのドキュメンタリー。

U2をはじめとしたロック・ミュージシャンを撮影しており、「これ知ってる!」というアルバムも多いんじゃないでしょうか?

前述のヴィヴィアン・マイヤーがシャッター音の静かなローライで路上の人にレンズを向けていたのが“いかにも”な感じですが、アントン・コービンはハッセルブラッドを使用しているのが、これまた“いかにも”でかっこいい。バシャッ、バシャッ!と大きな音をたてながらロックミュージシャンを切り撮っていきます。
しかし、その仕事に向き合う姿勢は、ロック+ハッセルといった派手なイメージとはまた異なり、いい撮影・いいビジュアルを創るためになにをするべきか徹底的に考える真摯な仕事ぶり。

尊敬すべき彼の人物像がよくわかるドキュメンタリーでした。

『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』

セバスチャン・サルガド。この報道写真家はスケールがでかい。
アントン・コービンなんかの仕事ぶりは憧れを抱きますが、サルガドの写真はそんな気さえおこさない迫力があります。

難民問題や地球環境をテーマに世界各地で撮影。
故郷ブラジルでの荒れた土地を緑で復活させる活動まで行なっています。

息を呑む写真とは、まさにこれらサルガドの写真のこと。迫力ある写真を映画館のスクリーンで次々に見せられて、しばし唖然としてしまう。
これら凄みのある写真とサルガドの活動を追っていくだけでも見応えがあるのですが、監督がなんとヴィム・ベンダース。サルガド+ベンダースという強烈コラボという贅沢なドキュメンタリー映画なのです。


そうそう、サルガドの使用カメラは「キャノンのEOS」。
ヴィヴィアン・マイヤーの「ローライ」、アントン・コービンの「ハッセル」と三者三様ですが、各々ほんとにぴったりと撮影スタイルと人柄をあらわした使用カメラになっていて面白いですね。

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