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ソール・ライター

現在、伊丹市立美術館で開催(5月20日まで)されている『ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター展』を観てきました。

これは多分みんな好きですよね〜。どの作品も構図や被写体の捉え方が気が利いていて印象に残る。いい意味でわかりやすいんです。

ソール・ライターのスタイル

ソール・ライターは1950年代からファッション写真の世界で活躍しますが、その後、一線からは姿を消します。しかし2006年にシュタイデルの出版した写真集が脚光を浴び(この時すでに80歳すぎてます)、2012年にはドキュメンタリー映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』で、さらに多くの人に知られました。

この映画のタイトル(邦題)で“急がない人生”なんて言われてますが、映画を観ると確かにこの人、ガツガツしてないんですよ。
映画の中でも自分でそういうことを言ってます。自分の仕事ぶりをアピールしたり、お金儲けも苦手。
撮った写真の管理なんてこともできないから、部屋中に過去のネガやプリントの入った箱が山積みだったりします。

ソール・ライター

とにかく、ただただ純粋に写真を撮るのが好きだったようです。写真の大半は住んでいたニューヨークの街角の一コマ。
ソール・ライターの特長のひとつに“色彩感覚”があげられると思いますが、看板、サイン、タクシーなどで彩られたニューヨークの街はそれにぴったり。

シャイだったのか、不躾な撮影をしたくなかったのか、モデルや親しい女性を除いて、被写体を間近で正面から写した作品は多くありません。斜め後ろからだったり、窓越しだったり、高架の上からだったり、相手に気づかれないような撮影が多い。
鑑賞者は、ソウル・ライターのファインダーを通して街の人々を盗み見しているような、ちょっと楽しい気分にさせられます。

そんな特徴的な撮影スタイルの中でもソール・ライターの代名詞とも言えるのが傘へのこだわりでしょう。相当に傘に惹かれていたようで、街行く人が傘をさしているショットがたくさん。それがどれも見事でたんに傘をさして歩いているシーンがとても印象的に切り取られています。

ソール・ライター

人柄が伝わってくるドキュメンタリー

さて、前述のドキュメンタリー映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』ですが、これはほとんどがソール・ライターへのインタビューで占められています。タイトルにあるように13にわかれて構成されているのが特徴ですが、彼のアパート内でのインタビューでカメラに向かってブツクサ言ったり、山積みの撮影済みの写真やネガをあさったり(ついでに掃除したり…)を眺める、退屈といえば退屈な映画。

なにか事件が起きるわけでも、創作の秘密に迫るわけでもないのですが、強いて言えばソール・ライターが自身の写真の狙いを言うシーンがあります。10章の「左耳をくすぐる」がそうなのですが、はっきりとした主題があるわけではないがよく見るとなにか違う、刺したり、突き付けられたりするわけではなくくすぐられるようなムズ痒さがある写真だということだと思うのです。ナルホドと感じますが、何で“左耳”なんでしょう?そのへんが謎です。

楽しもうとか、勉強しようとか思わない、写真好きのちょっと不器用なおじいさんの話しを聞くだけの75分(短い!)。たまにはそんな映画もいいものです。

参考までに章立てされた“13のこと”をあげておきます。

  1. カメラ
  2. 箱入りのカラー
  3. 遺す
  4. 神に至る道
  5. 写真を本気で
  6. じっとしている
  7. 写真を探しに
  8. 良い仕事を
  9. 快い混乱
  10. 左耳をくすぐる
  11. 芸術を分かちあう
  12. 急ぐ理由はない
  13. 美を求めて

ちなみに「1.カメラ」では展覧会でも展示されていた彼のライカM4がチラッと映されてました。レンズはズミクロン50mm。他にもローライを使用していたようですね。


ソール・ライターの写真は、秘境に赴いたり、決定的な瞬間を捉えたり、主義主張があるわけでもない、ちょっと左耳をくすぐられるような写真。
面白い構図や色彩など、アマチュアカメラマンでも直接参考にしやすいのではないでしょうか? ソールライターの写真にはそういう身近さがあるように思えます。

次に雨が降った日には、ついついフォトジェニックな傘を探してしまいそうです。

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